それは去年の今頃だった。
右下の親知らずに違和感を覚えたのが始まりだった。
歯医者に行き渋っている間に歯が痛むようになった。
常に痛むわけでは無く、波があり、その波が去ると何事も無かったように痛みを忘れてしまうのだ。
だがある夜、歯の痛みで目が覚め、薬を飲んでもなかなか痛みが引かず、これは早急に抜歯しなければならないと決意した。
歯科医に診てもらい、手術日を予約したは良いが、その日までの最後の4日間が地獄であった。
歯の痛みとはこれほど耐え難いものか。
夜は眠れず強い痛み止めを飲んでも2時間ほどで効果は切れる。
1錠にイブプロフェン800mg配合された薬を歯医者から処方されていたが、その薬を 2時間に1度飲むなどという恐ろしい事は出来ず、薬の効果が切れたらひたすら耐える、を繰り返す 4日間。
(イブ等、日本のドラックストアで売られているものは1錠に150mg なので、この薬がかなり強力であることが分かる。)
もっと早く歯医者に診てもらえば良かったと心から思ったが、後悔先に立たずである。
ともかくこの薬のみがこの世の癒しという、麻薬中毒のような状態だった。
そしてついに手術の日を迎える。
手術前に、上だけ手術着(?)に着替える。
ズボンと靴は履きっぱなしである。
手術台に乗り、全身麻酔がかけられる。
親知らずに全身麻酔と聞いて最初は驚いたが、眠っている間に全てが終わるのならそれも良いと思った。
因みに抜歯するのは下の親知らず2本だ。上には元々親知らずは無かった。
腕に管が付けられ、腕から麻酔を入れるのかなどと考えていたら、次の瞬間に全てが終わっていた。
続く。